2020年1月コロナウイルスの蔓延によって、すべての劇場ではリアルな鑑賞体験を提供することができなくなりました。能楽は、能舞台という空間で舞うことで初めて完成する演目であり、安易に2D映像で配信することは本来の価値を損なう可能性がありました。そこで、180度マルチアングル配信システムを開発。「自由視点」というデジタルならではの体験価値を考えました。
実際の撮影は、3方向から180度レンズを取り付けた高解像度カメラで同時記録を行いました。音声も立体的に記録、それぞれの視点で音の聞こえ方が異なるように設計することで、実際の体験をできる限り忠実に近づけることを試みました。
360度映像では体験を記録しましたが、より俯瞰的な体験を提供するためにMatterport(マターポート)を使用して、能楽堂全体の3Dスキャンを行いました。観客が実際に能舞台に上がることは叶いませんが、デジタル上では能舞台の裏側まで体験することが可能です。
小面と般若、演目で実際に使用される能面をまるで手に取るように鑑賞することができる体験を提供。フォトグラメトリという技術を活用し、360度方向から記録した写真を元に3次元データを生成しました。能楽師しか見ることができない能面の裏側まで、細かな素材感も忠実に再現しました。