2017年にART360°を企画した当初は、360度映像による展覧会記録は国内ではほとんど行われていませんでした。そこで、まずは技術的な説明や、プロジェクトの意義、将来的な利活用の可能性について忍耐強く説明を重ねました。幸い、アーティストをはじめ関係者の多くは展覧会を残したいという潜在的な想いがあり、段々とプロジェクトの趣旨に共感してくださる方々が増えてきました。また、この取り組みによってユーザーの直面する課題や、ニーズを発見することができました。
私たちは、上質な360°記録体験を提供するための専用プレーヤー開発、限られた時間で撮影を終えるためのワークフロー設計や、展覧会主催者・著作権者との撮影同意書の作成など、撮影から配信まで、あらゆるプロセスにおいて工夫を重ねることで、安定的な展覧会記録が可能になりました。
360°アーカイブは未来に体験をする記録であり、鑑賞者にとって異なる国や遠い過去のアートへの架け橋となるツールです。ART360°では、VR展覧会鑑賞プログラムを設計し、京都市内のアートスペースで毎月ワークショップを実施するほか、中・高等教育機関の美術の授業や、美術館の教育プログラムなど、VRが拓くアート教育の可能性を提案しています。